嬰寿の命水について
2008 / 06 / 23 ( Mon )
 当院で淹れているお茶に使用している「嬰寿の命水」が、周辺環境の変化に伴って、水量が激減してしまったこと、そしてその保全のための署名のお願いをしたのがつい先ごろでした。今後も身体にいい水が出ることを祈念し、嬰寿の命水について少々お話しを。

 嬰寿の命水は、箱根の木賀にある箱根花詩(はこねはなことば)という老舗の和菓子屋さんの敷地内から湧き出ている泉です。もともとこの場所は神社が建っていた場所で、裏に通じる階段を昇っていくと、そこには当時の祠があります。
 現在の箱根は首都圏から近く、温泉の質も良いことから、日本を代表する観光地の一つとなっています。しかしもともと箱根は山深く、水田や耕作に適さない土地であり、貧しい山村でした。そんな山村の人々が、生活をしていくために神様を祀ることになりました。
 まず、人間の身体に最も必要な水ですが、生活するための水をきれいにしていただかなくてはいけませんので、水を司る嬰寿弁才天様をお迎えしました。
 貧しい箱根の山村では仕事がありませんので、収入もありません。そこで生活費を稼ぐために、山村の男衆は、山を降りて出稼ぎに行きました。男衆が出稼ぎに出てしまいますと、家庭は母親と子供達だけになってしまいます。このような状況では子育てがままなりませんので、子母観世音菩薩様をお迎えしました。
 さらに、生きていくためには食べるものが必要ですが、その穀物を得るために、五穀豊穣を司る正一位稲荷様をお迎えいたしました。
 この三社様の功徳を以ってこの地域は命脈を保ってきたということです。

 江戸時代、箱根は“箱根八里は馬でも越すが”、“入り鉄砲に出女”という言葉で有名な関所があることからも分るように、東海道の最初の難所でありました。おそらくお茶屋さんや、お蕎麦屋さんのようなものが点在するだけのさみしい場所ではなかったかと思います。しかし明治時代になると、外国人要人の保養地として注目され、徐々に開かれるようになり、現在の姿にまでなりました。嬰寿弁才天様を祀った当時の村人も、その姿を見て安堵の気持ちでいっぱいではないでしょうか。

 村人達が守っていた嬰寿の命水が、一時の衰えから、多くの方の支えでまた復活することができたということです。村人達が守ってきた心を思い出して、これからは箱根の自然を守る意識を持つことも大切なのかと思いを馳せながら、昼休みのひと時、お茶を飲んで一服するのでした・・・。

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