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『多読術』 松岡正剛著 ちくまプリマー新書

 鍼灸というものを勉強したときに、わたしが一つ厄介だったのは同じ本を二度読めなかったことです。今でも同じ本を二度読むのは、どうも時間の無駄なような気がしてしまい、できれば次々と他の本を読みたいと思うほうです。しかし鍼灸師にとって、常に参照の元になるのは『黄帝内経・素問』『黄帝内経・霊枢』『難経』といった古医書の原典。これらは辞書的な使い方もできますが、時折読み返すことが必要となります。

 また鍼灸師となりますと、扱う症状はたくさんありますし、身体を見つめる視点を、専門の東洋医学だけではなく、現代科学的な視点から見ることも必要になりますし、もっと哲学的に見つめる必要もあります。また今日流行の脳科学としての視点も必要となり、多岐に渡った複層的な視点が必要となります。原点に常に戻りながらも、新しい知識も身につけていくという読書をしていく必要があります。

 そこで私がよくやるのは、まずは新書で読むことです。新書と言いますと、岩波新書、中公新書、講談社現代新書などがかつては有名でしたが、最近では様々な出版社から新書が出ておりますので、選択肢の幅が広がったように思います。しかし同時に、あまり読まなくてはよかったなぁと思うものもあったり、玉石混交の様相を呈しております。そんな中でも一つのテーマがコンパクトにまとまっている新書はかなり重宝します。そしてその一冊の新書をプラットフォームにして、そこにある参考文献などをさらに読み進めていきますと、かなりの深みを増すことができます。逆にある新書を読んで、あまり得ることがなければ、それ以上突っ込んでその分野へのめりこむ必要がないと判断できるので、時間の節約にもなると思います。

 そんな読書をしながらも、もう少し自分の読書体験を深めたいなと思うこともあります。人体、健康、東洋医学、鍼灸といった自分の専門を軸にしながら、読書の幅を広げていきたいと思っております。そこで、今回参考にしたのが、『千夜千冊』でも有名な、読書家・多読家の松岡正剛氏の本です。


多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)
(2009/04/08)
松岡 正剛

本の詳細を見る


 松岡氏は、読書家という肩書きだけではなく、工作舎という出版社を立ち上げた編集者でもあり、本の制作や販売など、本のあらゆる角度に精通した方です。

 本書では、まず読書を特別しないということを話しています。読書は限られた人がするような高貴な趣味ではなく、もっとハードルが低く、誰もが自分のペースや流儀で楽しめる開かれたものであると言っております。そして氏は、読書を、野球のバッターや植物、食事、ファッションなどにたとえながら、読書の楽しみや、多重的・多層的な読書の深みを説明してくれています。

 松岡正剛式とでもいう、読書体験を自分の中に取り込む方法論については、本書ではほんの少しの紹介にとどまっておりますが、本に直接書き込む方法や、ノートなどの取り方なども示唆に富んでおり、実用的な内容を含んでいます。わたしなどはついついもったいない意識が出るのか、いつか古本屋に売ってしまおうという欲が出るのか、本に直接マーキングをしていくことにはためらいがあります。そこで付箋をやたらと貼ってしまったりするのですが、このマーキングができるようになると、もっと読書体験の浸透が深まるのかなと思ったりもします。

 本書は、読書という知的作業の“基本動作”“柔軟体操”です。これから高校、大学に入って勉強に励む世代の方はもちろんのこと、自分の読書体験をより深く、より広く、改めて見つめ直したい方にお薦めです。また、松岡正剛氏という多読家・読書家が、どのような変遷を経ながら読書体験を広げていったのか、氏が読んできた本の系譜などを参考にすることができる好著です。

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Comment

あら。

こんにちは、ismさん。
そうだったんですか~。見たかったですねぇー。っていうか、テレビないんですけどね^^;
この本にもありましたが、まずは「本はノート」という感覚にならないと、マーキング術はできそうもないなぁ・・と。仕事関連の本だけでもそうしてみようかなと考えています。

先日のTBS情熱大陸が松岡さんだったのですが、番組内でもマーキング術をやっていましたよ。本の読み解きかたがすごく勉強になりました。
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