回数について
2006 / 10 / 10 ( Tue )
 治療をしていますと、よく患者様から何回くらいで治りますか?という質問を受けます。
 これはとても答えにくい質問です。
 鍼はマジックや魔法ではありません。鍼灸医学は、れっきとした東洋思想・東洋医学という“(西洋的なものの見方に対する)もう一つの自然科学”なのです。そのような背景のもとで、身体を診て治療をしていきます。そして東洋医学・鍼灸医学は、この身体を小宇宙と捉えており、小宇宙のバランスを調えることが無病に近づくという思想です。そしてこの小宇宙は休むことなく常に動いている存在ですし、今日の気温や食べたもの、怒ったりないたりという感情など、全ての活動が身体に影響を与え合っていて、絶え間なく動いていく存在なのです。常に動き続けるこの小宇宙のバランスを、治療(来院して治療を受ける)という一点のときに身体を診て調整しています。しかし、その調整でもまだ小宇宙のバランスが調わなければ、また次の治療を受けて調える必要があるわけです。
 このような常に変化する身体を扱うため、何回で治るとははっきりいえないのです。
 そしてもう一つ重要なのは、“鍼が人体を治すのではない”ということです。鍼灸治療というものは、もちろん鍼とお灸というものを使って身体を治すわけですが、治しているのは鍼や灸ではなくて、鍼灸治療によって活性化した自分自身の治癒力で治っているわけです。この自己治癒力は、鍼灸で調う方向にもっていくわですが、同時にその調う方向へもっていくための生活環境も必要となるわけです。それは食事であったり、軽い運動であったり、ごく常識的ですが忘れがちなものなのです。体力が残っている場合で、かつ病がまだ浅い時期であれば、数回で治りますといえるのですが、食生活が乱れ、病も慢性的になってしまったものは、そう簡単に治るものではありません。
 このように、鍼を受けているから治るのではなく、鍼を受けつつ自分の身体や生活に気づいていく、そして鍼治療と生活習慣が好循環に廻った時に、身体は始めて快癒していくのです。このように、鍼をしているからいいというのではなく、鍼灸治療を通して自分の生活を見直す、そういった全体的な視点も鍼灸治療を受けるとともに、患者様個々の中に育てていただきたいと思います。
 当院では基本的な食事の指導や生活の指導をしていきますが、こういったものをしっかり守っていただくことで、治療効果も上がり、快癒までの回数も減りますので、どうかそういった食事の指導などにも耳を傾けて実行してみてください。


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