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表参道・青山エリアにある源保堂鍼灸院のブログです。東洋医学・健康の話しをはじめ、治療院の日常、堂主・スタッフの情景などを綴っています。


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季節・一日・一生

 季節の巡りと身体の関係をお話して来ました。もう一度その表を載せますと、下のようになります。

春  - 生(発生すること) - 芽が出ること。
夏  - 長(繁茂すること) - 葉っぱを広げて伸びていくこと。
土用 - 化(各季節を完成) - その季節を完成し次に受け渡す。
秋  - 収(収斂すること) - 葉っぱを落とすこと。
冬  - 蔵(蓄えておくこと)- 種の状態。

 この春・夏・土用(もしくは長夏)・秋・冬は成・長・化・収・蔵という季節の働きがそれぞれあります。この時間の単位は全体で一年です。これを一日のサイクルに当てはめてみますと、朝・昼・夕方・夜ということに、それぞれやはり朝目を覚まして、昼は活発に活動し、夕方から夜にかけては休息する、という四季と同じようにサイクルを割り当てることが出来ます。
 さらにこれを人間の一生に置き換えてみますと、幼児期・青年期・円熟期・老年期と配当するができます。幼児期には知能を発達させ、身体を作る季節、そして青年期はその資質を思いっきり伸ばしていく、そして円熟期からは後進の指導など、次の世代へ引き継ぐことが大切となります。
 このように、東洋医学・東洋思想で考えているこの季節の巡りというものは、一日、一生というサイクルにも当てはめることが出来ます。この季節の巡りをもう一度見直してみますと、一日の過ごし方も理解できてきますし、一生を通してのライフサイクルも見えてくるものがあるのではないでしょうか。表参道・青山・源保堂鍼灸院には、赤ちゃんからおじいさん、おばあさんまで幅広い年齢がいらっしゃいます。この陽に幅広い年齢の患者様と接していますと、人間の一生というライフサイクルについて思うことが多々あります。
 こういったところでも、東洋の知恵が活きていることを実感しています。


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秋の主気

 昨日のブログでは季節の巡りと身体が密接に関係し、東洋医学はその密接な関係を身体の治療に活かしている、ということを書きました。昨日現わした表を再び出してみますと、以下のようになります。

春  - 生(発生すること) - 芽が出ること。
夏  - 長(繁茂すること) - 葉っぱを広げて伸びていくこと。
土用 - 化(各季節を完成) - その季節を完成し次に受け渡す。
秋  - 収(収斂すること) - 葉っぱを落とすこと。
冬  - 蔵(蓄えておくこと)- 種の状態。

 ここで注目していただきたいのが秋の季節の働きである「収」の括弧の中に記した“収斂(しゅうれん)”という言葉です。収斂という言葉は耳慣れない方がほとんどではないでしょうか。収斂の【斂(レン)】の字は、あつめる、徴収する、おさめる、という意味になります。つまり、収斂という言葉の意味は、“おさめる”ということになります。
 またこの収斂の他に、秋の気のはたらきを示す言葉として、【殺生(さっしょう)】という言葉があります。秋は五行で言うと金に配当されまして、金は刃物にも通じます。ですので、この「殺生」という意味は、刃物で“殺し生かす”ということになります。

 この【収斂】と【殺生】という二つの言葉で表現される秋の気ですが、果たしでどのような意味があるのでしょうか?
 この季節、植物は葉を落としていきます。まさにこの落葉の現象を古医書の人々は【収斂】【殺生】という言葉で表現したのです。

 それでは自然界の植物はどうしてこの時期に落葉するのでしょうか?
 それは冬に向けて実を結び、子孫である種を作るためです。もし夏のように葉っぱが沢山ついたままですと、栄養分は葉っぱにとられてしまい、実や種に栄養を送ることが出来ません。植物はこの秋の気の到来を感じはじめると、自ら葉っぱを落として栄養を実や種に集中しようと努めていきます。この作業を人工的に人間が行なう作業を剪定といいます。
 このように自然を観察してみますと、葉っぱを落とす剪定作業が【殺生】で、そこで出来た栄養をより少数の実に収めることが【収斂】ということが分ると思います。
 夏から秋にかけての季節の変化は、それまでの夏が、枝葉を伸ばして葉っぱを増やして広げていくことが主であったの夏の気から、その現象とはまったく逆に広げすぎた葉っぱを落としていく秋の気に代っていく変化となりますので、これは身体にとっても大きな変化となるわけです。
 このような季節の巡りと身体の変化を観察しながら、より季節に適合した身体にしていこうとするのが当院の施術する「本治法」の目標の一つです。季節に身体が沿っていくということは、身体が自然と同調している状態、つまりそれが無病の証でもあるからです。
 

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主気と客気

 東洋医学は様々なファクターを考慮に入れて身体を診ていきます。
 その一つが季節の流れです。これは天地人は相関して影響しあって動くという東洋思想からの発想から生まれたものです。この季節の流れに則っていることは、無病であり、季節の流れに乗れないことは病と考えることができます。
 この季節の流れと身体の状態は、植物の一年のサイクルにも喩えられています。これをまとめてみますと以下のようになります。

春  - 生(発生すること) - 芽が出ること。
夏  - 長(繁茂すること) - 葉っぱを広げて伸びていくこと。
土用 - 化(各季節を完成) - その季節を完成し次に受け渡す。
秋  - 収(収斂すること) - 葉っぱを落とすこと。
冬  - 蔵(蓄えておくこと)- 種の状態。

 このように各季節には各季節の働きがあります。この働きについていくことが健康には大切になります。たとえば冬の時期に春のように芽を出しますと、その新芽は寒さで凍えて成長が出来ませんし、場合によっては寒さで枯れてしまいますので、このようなことは避けなくてはいけません。
 このような各季節がもっているはたらきを「主気(しゅき)」と呼びます。
 しかし毎年「今年は暖冬だった」「今年は冷夏だった」というように、その季節の主気が順当に現れるわけではありません。このように順当ではない主気は、自然化や人間の身体に影響を与えます。たとえば冷夏であれば、実がうまくならないために昔でいうと飢饉ような状態になります。このように、悪い影響を与える場合は順当ではないので「客気(きゃっき)」と呼びます。
 主気と客気という考え方を導入し、身体を診ていきますと、体が季節の流れについていっているのかが分ります。病気があるわけではないが、何故か季節の変わり目に調子を落とす方などは、この季節の変化についていけないことが多いという事が分るわけです。特にこの夏から秋への変わり目、そして冬から春への変わり目は大きな変化ですので、特に注意が必要となります。
 このように、季節の流れを考慮に入れた東洋医学・鍼灸治療は、季節の変わり目に調子を落とすような症状がある場合は、治療の適応となります。
 天高く馬肥ゆる秋、スムーズな季節の移動をしたいところですね。
 

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『男はつらいよ』 第四十二話 ぼくの叔父さん

男はつらいよ ぼくの伯父さん 男はつらいよ ぼくの伯父さん
渥美清 (2005/07/29)
松竹
この映画の詳細を見る

 『男はつらいよ』を第一話から観続け、ようやく四十巻を越えました。『男はつらいよ』は正式には第四十九話までありますが、第四十九話は渥美清没後に作られたもので、さくら(演・倍賞千恵子)と博(演・前田吟)の息子(演・吉岡秀隆)が主人公です。渥美清が出演するものとしては第四十八話までとなります。
 四十巻を越えたあたりから、さすがの寅さんの姿にも年齢を感じさせるようになります。移りゆく時代の中で、変わらぬ格好は、かえって宇宙人のように際立ってきているようにさえ思います。
 長きに渡る車寅次郎の旅もいよいよカウントダウンとなっていきます・・・。

 この第四十二話からは恋の主役は満男に移ります。車寅次郎は満男の恋の指南役、人生の指南役となります。寅さんを主役にしながら満男も引き立てるこの演出はとてもうまいなと思います。
 この第四十二話の見所は、最後です。
 佐賀への旅からバイクで帰ってきた満男を、寅屋のみんなやたこ社長を初めとするおなじみの面々が出迎えます。緊張する父親・博に、やさしく迎えようとする母・さくら。このシーンの最中にたこ社長が「よく言ったもんだよな、かわいい子には旅させろって!」といいますが、まさにここでは旅を通して成長した満男を迎えんとする場面です。
 この場面は、涙、涙のシーンです。
 帰ってきた満男をみつめる母・さくらの表情、そして新聞に目を落としながらも少し涙目になる父・博。このさくらの表情がたまらなく切ないのです。
 そしてそんな中、“ぼくの叔父さん”である車寅次郎から電話がかかってくる。満男を迎える皆の安堵と歓びで沸き立つ寅屋。しかしその喝采とは対照的に、寅屋でさくらが手にする受話器の先には、一人赤電話の前でたたずむ寅さんの姿・・・。

さくらは受話器に向かって嬉しそうに寅さんに話しかける。
「みんないるわよ、おいちゃん、おばちゃん、社長さん、裏の工場のゆかりちゃん、びんごやさん、さんぺいちゃん、源ちゃん、博さん、もうお店いっぱいの人よ~
どうしておにいちゃんここにいないの~」
そしてたこ社長が、
「いないのは寅さんだけだよ~!」と。
さくらは「聴こえた?」と寅さんに聞き直す。
そしてたこ社長が
「たこだよ~~!!」と受話器の向こうの寅さんに大声で叫ぶ。
そして画面は寅さんの姿へ・・・。
お正月間近の寒い冬の中、寅さんは一人で受話器にありったけの十円玉を投入している・・・。そして照れくさそうに、口は悪く寅さんらしく受け答えし、
「そうだよ、旅をすれば人間誰でも賢くなる。」と答える。
寅屋の喧騒を聴いているうちに、用意していた十円玉は尽きてしまう。そして車寅次郎の旅が再び続いていく・・・。
 
 この四十二話作られたとき、誰もが“丈夫で長持ち”だけがとり得の主人公が亡くなるとは誰も思っていなかったはずです。しかし、今思うと、この辺りから車寅次郎自身のカウントダウンが始まっていたのです。そのことを思いながら観ると、この場面は涙無しでは見れないのです。寅さんが永遠に愛される理由が、再びわかったような気がします・・・。


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丹波哲郎と東洋医学

 丹波哲郎氏が亡くなったというニュースをネットで読みました。刑事ドラマ『Gメン75』を観ていた頃が懐かしく思い出されます。『8時だよ全員集合!』がかとちゃんの「歯磨けよ~」「また来週~~」のフレーズとともに終わると、その次は『Gメン75』でした。親に早く寝なさいと怒られながらもずるずると夜更かしをして時々見ていたように記憶しています。
 この『Gメン75』が人気を博していた頃、丹波哲郎氏はスピード違反か何かで警察に呼び止められたそうです。そのとき丹波哲郎氏は、「オレはGメンだ!」と言い放ったというエピソードをきいたことがありますが、これは本当だったのでしょうか・・・。

 さてこの丹波哲郎氏と東洋医学の接点を見ていきます・・・。
 日本現存最古の医書として『医心方(いしんぽう)』という書物があります。平安時代に書かれた書物で、これは隋唐から入ってきた医学書物の集大成的な本です。この書物が朝廷に献上されたのが、永観二年(994年)のことでありました。この『医心方』の著者が丹波康頼(たんばのやすより)です。
 この丹波康頼の系図を辿っていくと、中国・後漢の霊帝の子孫で日本に帰化した阿智王(あちのおみ)につながり、阿智王から数えて8世の孫が丹波康頼とされています。丹波康頼は針博士・医博士となり、丹波の宿禰(たんばのすくね)の姓を朝廷より賜りました。
 『医心方』は全30巻の膨大なもので、宮廷医学の秘蔵の書物となり、これ以後長く秘蔵され、幕末に丹波康頼の子孫である多紀氏が刊行するまで一般の医家の目には触れることがありませんでした。内容は薬物・養生・房中などが主なものであり、陰陽五行論や脉などの多くは入っていません。この『医心方』の功績により、丹波家は医家としての地位を確立し、宮廷医療を掌る役目を約900年間務めることになります。
 その後もう一方の宮廷医療の雄である和気氏とさまざまに駆け引きを続けていきながら、丹波家(多紀家)は幕末過ぎまで『医心方』を守ることになります。丹波家は江戸の末期から幕末まで、『素問識(そもんしき)』『霊枢識(れいすうしき)』などを現わした多紀元簡(たきもとやす)、それを受け継いだ多紀元堅(たきもとかた)など、その後の考証学派となる系譜を輩出していきます。
 そして明治前期にはその子孫である丹波敬三(たんばけいぞう)という人が、東京薬学専門学校(現・東京薬科大学)の校長となりますが、この丹波敬三の子供が、日本画家として著名な丹波緑川(たんばりょくせん)。そしてその子が丹波哲郎氏であります。
 丹波哲郎氏の先祖を辿っていきますと後漢まで遡るというわけです。そして脈々と続いた家系は、この日本の医療に大きな足跡を残した歴史があります。あの鋭い目つきや渋い声、あの貫禄は、この歴史のスケールを物語っているかのようでした・・。合掌。


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 最近空が高く、秋の気配がいっそう増してまいりました。
 芸術の秋、スポーツの秋、そして食欲の秋。秋は冬に向けて身体も貯蔵に向かう季節です。そのためか自然界ではおいしいものが増えてきます。
 今日は秋の味覚である栗のお話です。
 『本草綱目』によりますと、
【主治】益気.厚腸胃.補腎気.令人耐飢.生食治腰脚不遂.療筋骨断碎.腫痛お血.生爵塗之.有效.
とあります。
 「気を益し、腸胃を厚くし、腎気を補す」と最初にありますが、まず「気を益す」というところから、栗は体の動力源である気を益す食べもだということが分ります。
 そして、「腸胃を厚くする」というところから、胃腸の働きを助けることも伺えます。この場合厳密に言えば、「胃腸」ではなく、「腸胃」という表現になっていることを考えますと、体の中側から助けるということになります。
 そしてさらに「腎気を補す」とありますように、栗は腎に良いことが分ります。腎は先天の気が納まっているところですが、この先天の気とは、自分の持っている生命力のようなものを指します。このことから、「腎気を補す」ということは、栗は先天の気を持つ腎を助けるということが分ります。
 先天の気は、胃腸から送られる後天の気(飲食物が消化・腐熟されてできた栄養素)で補充されていますので、「腸胃を厚くし」「腎気を養う」ということは、先天の気と後天の気の両方を補うことになります。
 さらに「生で食べると腰脚がうまく動かないのを治す」とかいてありますが、この腰は腎に配当され、脚は胃経・脾経が走っていますので、腸胃と解釈できます。ここでも栗は先天と後天によい食べ物であることを示しています。
 以上のように、栗はとても健康にいい食べ物ということが分ります。秋の味覚としての栗は、体の腎と腸胃に効く食べ物だと思いながら食べてみるのはいかがでしょうか。



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東洋医学と数&『博士の愛した数式』

博士の愛した数式 博士の愛した数式
寺尾聰 (2006/07/07)
角川エンタテインメント

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 ある脳の機能障害で短期記憶が80分しか続かない数学博士の物語。『北の国から』でお馴染みの吉岡秀隆氏が高校の数学の先生役でこの物語のストーリーテラーとして話を進めていく。数の不思議、数の神秘的な姿をやさしく解いてくれます。数という世界を通して人間の一面を語る映画です。

 大学受験のとき数学も必要だったので、数学もある程度勉強しました。しかしどうしても理解できなかったのが“虚数”。この映画の中でも“虚数”が出てくるのですが、この映画をそのときに見ていたらもっと分りやすく理解できたのになあと思いました。



 我々は生まれたときに生年月日という数を持って生まれてくる。そして靴屋に行けば自分の足のサイズを数で店員に伝える。ありとあらゆるところでこの“数”が付きまとっている。いったい数とはなんであろうか。数というものの存在に気づいた時の人間は、どのような驚きや発見があったのでしょうか。人間の脳は時代を追って進化をしてきて、今現在も進化を遂げているといわれていますが、この数の発見はかなりのインパクトを人間の脳に及ぼしたのではないでしょうか。

 東洋医学、東洋思想でも数はとても大切です。私が治療の基本に置いている一つの理論である運気論というものは、まさに暦という数の世界であり、その数の世界を天地人の動きに結びつけた画期的な知見です。
 古医書・中国古典を読むときに意識する数というものを考えてみる。

1 → 混沌(体の全体像・小宇宙としての人体)
2 → 陰陽(男女・左右・臓腑など)
3 → 天地人(三焦など)
4 → 東西南北(四立(立春・立夏・立秋・立冬)など)
5 → 五行(木火土金水)
6 → 三陰三陽(経絡の発生)
7 → 七星(奇経)
8 → 八網理論(病の分析)
9 → 九宮八風篇(体質など)

 このように数で東洋医学をまとめると、また面白い見方が出来るのではないでしょうか。
※ それぞれについては各論が必要ですので、より深いところは割愛させていただきます。今回はこのように数というものが東洋医学・東洋思想の中でも重要な理解の鍵となっていることを知っていただきたいと思います。



中国神秘数字 中国神秘数字
葉 舒憲、田 大憲 他 (1999/09)
青土社

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現在の中国をみながら

 自民党の新総裁が決まり、これから新しい内閣が発足する。“タカ派”と目される新総裁の中国対策はどうなるのでしょうか。といっても政治のことはよく分かりません。

 現在の中華人民共和国を見ながら古医書との関係を考えてみます。
 中華人民共和国の国土を見てみますと、東は日本海に臨み、北は黒竜江でロシアと接し、西はタクラマカン砂漠を越えてタジキスタンと接し、南はミャンマー、ラオスと接するメコン川上流まで広がっています。面積は9596961平方kmで、これは日本の面積377800平方kmの約25倍です。そして人口は現在約13億人で、日本の人口が1億2300万人ですから、日本の約10倍です。米国の人口2億7000万人と比較しましても、この人口の数がいかに膨大なものかが分かります。
 中国は国土も広大であり、その広大な国土に入る地域色も様々で、政府が認定している民族は漢民族を入れて56あり、中国は多民族国家としての印象が強くあります。しかし実際に民族の人口比率を見てみますと、この人口13億人の94%は漢民族であります。また言語の側から見ても、若干の地方語がありますが、ほぼ同じ言葉を話しているという事実があります。例えば日本などは島国なので古来より外からの人の流入が少なかったため、単一民族の様相が強いことは理解できますが、中国の場合はそうではありません。中国史に現れる統一王朝は、常に周辺民族からの攻撃を受けたり、また周辺民族を併合させたりといった他民族との交わりが多い国であります。しかしながら、先ほど述べたような人口の94%が漢民族であるという現実を見てみますと、意外な印象であり、アメリカやロシア、ヨーロッパなど各国がいろんな民族を包括してきたことのにくらべて、中国史はイコール漢民族の歴史といっていいほどに、漢民族が単一で発展してきました。漢民族は今から何千年も前の昔に黄河のほとりに文明を築き上げて以来、その文化を今日まで時代と共に発展させながら民族の統一性を保ってきました。合計500年間のほど分裂した時期はありましたが、それ以外は統一国家を保っています。同じように古く文明を形成した民族は人類の歴史上多くありましたが、それらは他の民族の侵入や圧迫によって断ち切られています。居住する領域を拡大しながら人口も増大していく、そして漢字文化圏・漢民族文化圏というものを維持してきたことは、人類史上類を見ない歴史であるといえます。その歴史の積み重ねと、漢民族の歴史の継続があるからこそ今日我々も古医書を手にすることができるのであります。
 しかし惜しむらくは、清朝末期の混乱や、毛沢東の文化大革命の混乱で古医書の世界はかなりダメージを受けたようです。現在中国で行なわれている中国医学は、「中医学」と呼ばれていますが、これは古医書医学とはかなり様相が異なっています。
 このように現在の中国を見ながら古医書の世界を見てみると、まだまだこの古医書という遺産が活かされていないのではないかと思います。この歴史的な遺産をを受け継ぎならが、更なる研究の余地があると思います。
 

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全日本鍼灸学会

 鍼灸を受けに来た方で、他の治療院に通っていた方は、当院の治療を受けていい意味で驚く方が多いです。それはつぼの数が少なく、基本的に片側に鍼をしていくこと、鍼を刺しっ放しにして放置しないなど、他と違うからです。このように鍼灸と一言で言っても、様々な手法があります。
 現在、流派や手法を問わずに鍼灸師が集う大きな会として全日本鍼灸学会というものがあります。この全日本鍼灸学会は、どちらかというと研究的な要素が強く、鍼灸をより科学的信頼性のある医療へと発展させるような趣旨が強い。ですので、臨床家の立場からするとどうなんだろうと思うようなラットでの実験データなどの発表もあったりする。これは臨床と研究の違いで、他の世界でもこのような齟齬はあるのだろうと思います。しかしながら、治療者と患者という関係が密な鍼灸治療に於いて、このような齟齬が患者や臨床家との距離を大きくしているようにも思います。
 私はこの全日本鍼灸学会の東京地方会の広報副部長をしています。私は古医書による本治法を治療の手法としているので、この会の方向性とはかなり意を異にしたりするところもある。毎年今年は続けようかどうかと迷ったりします。今回も迷った挙句、続けることにしました。それは、もっと“古医書の世界をそのまま捉える”ことの有効性を同業の先生方にも、特に鍼灸を単なる物療と考えている先生方にも伝えたいからです。来年はこのように積極的に声を大きくしていこうと思います。


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後半戦に

 研究会の講師をして早半年。
 序論から始まり、総論、各論と進み、さらにそれをいかに治療に結び付けていくかというところに来ました。この辺りからこれまで覚えてきた各論を使っていかないといけません。どれだけ覚えてきたか、どれだけ勉強してきたかが問われる最初の時期でもあります。自分が担当する生徒さんたちの進み具合を判断しながら、皆のやる気を高めているところです。


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『子ぎつねヘレン』

子ぎつねヘレン 子ぎつねヘレン
大沢たかお (2006/08/30)
松竹

この映画の詳細を見る

 幼少の頃の病気で視力と聴力を失った人で、障害者に今も勇気を与えてくれている“奇跡の人”と称されるヘレン・ケラーがいる。この映画『子ぎつねヘレン』に出てくる“主人公”のこぎつねは、視力と聴力を持たないため、ヘレン・ケラーから“ヘレン”と名づけられる。そしてもう一人の主人公である少年は、そのヘレンを介助しながら、外の世界との接点を一緒になって探しながら、お互いの成長を確かめ合う。

 我々の鍼灸業界にも盲人の先生は多い。世界的に見ても、このように盲人の方々にある職域が普通に開かれているのは珍しいという。ましてや医療という職種で開かれているのはさらに珍しいのではないでしょうか。
 私が入っている会には盲人の先生もいらっしゃるので、私も盲人の先生と接する機会が多い。もしこの仕事をしていなかったら、こういう盲人の方と接する機会はほとんどなかったであろうし、その盲人の方々の世界を想像することはなかっただろうと思う。 
 我々は自分以外の世界を認識する時、その多くを視覚に頼っている。例えばある人の顔を覚え、それを「○○さん」とインプットする時には、視覚のインデックスが真っ先にあるのではないだろうか。眉毛の形、鼻の形、髪型、体型などいろいろな情報を視覚から得ている。
 しかし、目が見えない人々は世界を認識するための重要な情報源である視覚がないのである。まず人間に顔があるという認識すらはっきりしないのではないだろうか?そして顔という部分に目があり、耳があり、口があり、それが一つ一つ人によって違うなんてことも、視覚がなければ認識することは難しい。このように考えてみると、この視覚がないということは、自分以外の外にある外界を認識する上で、とても初歩的なレベルから困難を生ずるのではないだろうか?
 私が仲良くしてもらっている盲人の先生がいます。その先生と仲良くなったきっかけは「金八先生」でした。私もその先生も「金八先生」が好きで、そこから話がつながっていった。その先生が驚くのは、金八先生に出てくる生徒のキャラクターをよく理解していること。ときには席のことも、「あの生徒は後ろに座っているんだよね?」と指摘したりする。またこの先生は金八先生に限らず他のドラマも好きなのですが、そういったドラマを通して誰それという女優さんはどんな感じの役が似合うとか、誰それという男優さんはこんな感じなの?とほぼ我々が感じるようなことを指摘したりする。
 我々健常者は視覚に頼りすぎているのかもしれないと思う。逆に言えば、視覚に頼らなくても世界の認識は可能であり、我々とは違う回路が発達して補っているのかもしれない。よく視覚がないと聴力が発達するとか、他の触角などが発達するといわれるが、世界をどのように認識していくかという過程を考えると、それほど単純ではないような気がする。

 この金八先生好きな先生が
「瀬戸さん、あのさあ、この間の回を観てないんだったらテープ貸してあげるよ。」と言ってくれた。
 私は
「あ、はい。」と答えた。
 その先生は続けて、
「あ、でもテープって言ってもカセットテープね。ぼくらは音だけあればいいからさ。」と言った。
 今家電業界では液晶テレビやプラズマテレビなどテレビの話題が多いそうです。そして何年かしたらデジタル放送になり、我々が使っているテレビの多くは使えなくなるという。しかし、目が見えない人にとってはデジタルであろうが、アナログであろうが、液晶であろうがなんであろうが関係ない。家電業界やテレビのテクノロジーが伸びていくのはいいことである。そしていい画質でいい場面をもっと多く観れるようになるのは楽しいことです。しかしその一方で、目が見えない方々にとっては、このようなテレビの変革はほとんど必要がない。
 物事の見方というものは、あるものを失ってから見えてくることもある。真っ暗な部屋でさらに目を閉じてしまうと、自分の部屋でさえ怖くて、まともに一歩も踏み出せない。目が見えないことを少しでも想像して体感してみると、その怖さの中に新しい世界との接点の仕方が見えてくることもある。このようにしながら健常者と障害者の接点を見つけることも必要かと思うことがあります。

 この映画を観ながら、改めて世界と自分との接点について考えました。世界を知るということは、いかなるものなのでしょうか・・・。


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台風一過

 昨日の午後から雨が降り始めました。そして風が強くなりました。
 夜は患者様のうちにお呼ばれして食事をしてきましたが、がたがたと窓が揺れ、どんどんと風と雨がどんどんと強くなっていきました。

 そして今朝は台風一過で、青い空が広がっています。今日は気温が上がりそうです。
 真心ブラザースの『ひこうき雲』を聴きながら仕事をしたい気分です。


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『THE MYTH 神話』

THE MYTH 神話 THE MYTH 神話
ジャッキー・チェン (2006/08/25)
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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 これはジャッキー・チェン主演の映画です。ジャッキー扮するジャックは新進気鋭の考古学者。ジャックは勇気と知恵をもって、秦の時代の神話を解明していく。
 ジャックは神話の解明をしていく中で、自分の前世の記憶を思い出す。その前世の記憶の中でジャックは秦の始皇帝の名将軍・蒙毅であった。その将軍はとても武功が高く、剣の名人でもあった。そのときの体の記憶がそのまま今生のジャックにも蘇り、インドの剣術使いとも対等以上の渡り合う。そしてその記憶を頼りに、旅を続けていくうちに、ついに不老不死の王宮を見つけ出す・・・。
 これまでのアクション重視の映画に比べて、この映画はストーリーが重視されている。ジャッキーのアクションシーンを楽しみにしている人には少し物足りない映画かもしれない。しかし、今生と過去生を結ぶ映画として、そのストーリーを見ていくと、とても興味深く観ることができる。
 ヒプノセラピーで感じる事(見る事)ができるものは、この映画のようにはっきりと見えるわけではない。夢のように見ているような、見ていないような、しかしはっきりと感じとっている・・・そんな感じです。この映画のように劇的な前世が必ずしもあるわけではないですが(何せこれは映画の話ですから・・・)、前世(過去世)というものがこんな感じで今生にも影響を与えるのかなと感じる、そんな台詞もちりばめられたいい映画です。


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四国出張へ

 今日は仕事の後は四国へ出張します。
 台風の行方が気になりますが、夜行バスで出発します・・・。
 四国の四季はどうなっているでしょうか・・・。



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先生の思い出

 受付のほしクルさんと休み時間に話をしていました。その話は小学校のときの先生に及びました。
 今はどうかわかりませんが、私が小学生のときは忘れ物をすると必ず罰がありました。平手打ちをする先生、黒板に線を描くときに使う1メートルの木の棒でのケツバット、蹴飛ばす先生などさまざまいました(それが体罰にあたるかどうかはここの議論をするつもりはありません。かといってそれらが愛情のある行為に感じたという事でもありません)。

 そんなさまざまな“得意技”を持つ先生がいる中で、唯一そのような罰のない先生がいた。それは小学校4年のときの担任の先生だった。白いジーンズが似合い、痩せ型で、小柄な先生でかっこいい先生だった。学級会などではジーっとしながら横で手を組みながら生徒の話し合いを聞いていた。そして生徒の議論が煮詰まってくると、一言二言アドバイスをする感じだった。
 
 体育の時間、ポートボールをする期間があった。そのときどのような方法でチーム分けをしたのか定かではないが、学級内で強いチームと弱いチームに実力差が分かれてしまった。私は運動神経が鈍いほうなので、もっとも弱いチームに入れらた。運動神経はそれほど良くないので体育は苦手で、とくに球技のような団体競技は嫌いだった。へまをするとチームに迷惑をかけるから、というのが表向きの理由であるが、実際は自分の責任で失点したときのチームの視線が痛かったというのが本当の理由であった。

 私が所属したチームは、誰が言い出したのかは知らないが、いつのまにか「雑魚チーム」と呼ばれるようになっていた。雑魚とは弱い魚の代名詞のようなもので、必ず勝てる相手、しかもかなりの点差で勝てる相手、というような感じであった。その名の通りわれわれ雑魚チームは総当りで連敗、連敗を続ける。しかし、最初から弱いというのがわかっているので、チーム内で痛い視線を感じることなく、気を楽にしてプレーをしいたと思う。
 総当りの最後でわれわれ雑魚チームは最強と思われるチームと当たることになった。クラスの中でも選り抜きの運動神経のいい生徒が集まったチーム。そのチームと対戦した。
 周りの予想とに反して雑魚チームは序盤から点を重ねた。それがかなりの意外性があったのか、周りの応援もこのときは雑魚チームに多かったように思う。そして負けてはならぬ最強チームは、かって当たり前の雑魚チームを相手にかなり焦り、本気モードになってきたのがわかった。
 健闘もむなしく、結局われわれ雑魚チームは後半急速に追いつかれ負けてしまった。
 試合が終わりコートの外に出る。
 先生が近づいてきた。私は先生に向かって、
「やっぱり雑魚は雑魚でした・・・・。」と言った。
すると先生は、
「そんなことないぞ~~。さっきのあのパスなんて良かったぞ。雑魚なんかじゃないぞ。」と真剣な顔をして応えてくれた。そのときの表情ははっきりと今でも覚えている。

 小学四年の終業式のとき、この担任の先生は、生まれ故郷の学校に転勤するためぼくらの前を去っていった。今もどこかで“かっこいい先生”をしているのだろうか。そしていつかどこかでまた会えるだろうか・・・。
 受付のほしクルさんと話しているうちに、どんどんと目頭が熱くなっていくのでした・・・。


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肺は皮毛に合する

 東洋医学では、五臓六腑の状態がどのように外の状態に現れるかを観察することができます。たとえば爪は肝臓、舌は心臓というように対応がなされています。
 その中で「肺は皮毛に合する」というのがあります。これは肺の調子が皮毛、つまり皮膚(肌)に現れるという意味です。この肺ですが、季節の対応で言えば、まさに今この季節の「秋」になります。9月8日の白露を過ぎ、いよいよ秋の気がたけなわになってきています。今年は9月に入り、何度か暑さがぶり返したりもしましたが、8月が終わり、長夏が終わるとともに風は一気に秋の様相を呈してきました。
 この季節は秋の気が旺となりますので、肺の調子もよくなり、そしてそれに関連している皮毛(皮膚)の調子もよくなります。当院では季節の巡りを重視した本治法をしていますが、この時期になりますと、この皮膚の調子を診ることが、一つの健康の指標になってきます。治療を受け続け、食事の指導を守っていただいていますと、この時期になると皮膚(肌)が一段とつやを増してきます。そして、この皮膚は、風邪など外からの病の原因に対する最初の防御でありますので、皮膚(肌)につやが出るということは、それだけ身体も病にかかりにくくなる、ということです。
 まだ秋の気が増していきますので、お肌につやを戻したい方は今からでも遅くはありませんので、当院の治療を受けてみたらいかがでしょうか。他とは違う治療の効果を感じることが出来ると思います。


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職業観



 社会学の基礎を築いた一人にマックス・ウェーバーという方がいます。この社会学者は、プロテスタンティズムが西洋の文化や倫理観、仕事に対する意識というものをどのように影響をしたかを研究しています。このマックス・ウェーバーの考え方によりますと、西洋の人々は自分がしている仕事を「calling」と意識しているといいます。この「calling」とは、神様から与えられた仕事という意味になります。
 一方中国人はどのように仕事を捉えているかといいますと、まさにこの「職業」「職守」という言葉の中にある「職」という漢字に現れています。
 この「職業」の「職」という字ですが、意味は、「もっぱら」という意味になります。つまり、「職業」というものは、「専ら(専門的にそれだけを、ひたすらに)行う業」ということになります。ここには西洋の「calling」のような神様という概念はまったくなく、与えられたという思いも全くありません。仕事の内容や意味を問うことなく、ただひたすらに、日々もっぱらおこなうことが職業なのです。
 最近では「天職」と「適職」という言葉の使い分けもされるようになりましたが、この西洋、東西の職業観の違いは、その差異にもつながるのではないかと思います。「天職」と「適職」という言葉が使い分けられている背景には、自分がしている仕事に対して、単なる経済的基盤というだけではなく、そこに生きがい、あるいは生きている意味を見出すことが求められているようにも思います。それは自分らしく生きるという意味で、とても大切な視点となり、社会的にもそのような視点が認められつつあるのではないでしょうか。
 しかし、その一方で、自分の仕事に意味を見出せない人も多くいます。そしてそのことにジレンマやストレスを感じてプレッシャーになっている人も多いと思います。これは一つの視点の切り替えかもしれませんが、前述したような中国人の「職業」観のように、とにかく“意味”を先に考えずに「もっぱら専念してみる」ということも大切なのかもしれません。それは、専らに仕事をしているうちに、その意味が見出せることもあるからです。私自身も、この鍼灸という仕事を選ぶ時に、そこには使命感のようなものはほとんどありませんでしたし、「calling」のようなものも感じることはありませんでした。しかしいつの間にか自分の天職と思うようになり、そして同時に専らに仕事に関わることを選択してきたように思います。
 意味を見出してから仕事をするのか、仕事をしながら意味を見出していくのか、人それぞれ見つけ方は異なるかもしれません。しかし、西洋・東洋の職業観を見渡しながら、自分の仕事への視点を切り替えていく、そういう余裕を持つことが自分の仕事を再発見することにつながるのではないでしょうか。
 日ごろ古医書という漢文を読んでいますが、普段何気に使っている漢字を紐解いて見ますと、多くの発見があったりします。もう一度漢字の文化を再発見するためにも、漢和辞典を傍らに置いておくことをお勧めいたします。

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参考図書


全訳 漢辞海 全訳 漢辞海
戸川 芳郎 (2005/10)
三省堂

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薬に関して(2)

 最近では西洋医学のお医者さんでも漢方薬を処方するようになるところが増えています。また、街を歩いていますと、漢方薬を専門に処方してくれる薬局も増えているように思います。
 この漢方薬は、よく「副作用がない」といわれていますが、そうとも限りません。かなり強い生薬作用をもつものもありますので、やはり注意が必要です。

 ところで、この漢方薬ですが、病院で処方される時に、
「漢方薬はやさしく身体に効きます。」
「漢方薬は体質改善が主ですので、効き目が出るまで時間がかかります。」と言われたことはないでしょうか?また実際にそのように言われたことがなくても、そのようなイメージをもとに、西洋の薬よりも漢方薬を選択する方も多いのではないでしょうか。
 しかし、これは大きな勘違いであります。
 効き目が出るまで時間がかかると言いますが、これは病院側の言い訳ではないかと私には思えます。本来薬であれば効果は少しづつでも現れるものですが、漢方薬はあまりそれが見られず、途中で漢方薬を飲むのを辞めてしまう人が多いと思います。
 ではなぜそのような言い訳を病院側はするのか?
 それは、病院の先生に、漢方薬を処方する本来の知識がないからです。本来東洋医学の範囲である漢方薬には、東洋医学独自の診断方法を基にして「証」というものを立て、それから処方がされますが、病院の多くの先生には、その「証」を立てるための東洋医学の知識はほとんどありません。いくつかあげられる症状群の中から適当と思われるものをチョイスしているだけで、そこには東洋医学的根拠を見出すことは困難なことが多いようです。
 例えば風邪の初期には葛根湯といわれますが、これは、風邪の初期でもまだ汗を出すだけの体力がある段階のことを指します。そして汗を出して自らの熱を下げることができるときに、この葛根湯は効果を発揮します。もしこの段階を過ぎて体力がないときに葛根湯を処方されますと、失った体力をさらに消耗させてしまうので、風邪が悪化することもあります。このように初歩的な漢方薬である葛根湯を一つ上げてみても、葛根湯を処方するためには「葛根湯之証」という診断が立てられなければなりません。この「証」を立てるための東洋医学のシステムを学んでいなければ、本来の処方ではできず、身体に効くための、病を治すための薬を選ぶことはできません。ですので、単に症状だけを集めただけの処方ですと、その漢方薬は身体には効きませんし、場合によっては副作用を催すこともあるかもしれません。
 このように現在多くの病院で行われている漢方薬の処方は、西洋医学的な視点での薬の処方でありますので、最初に「漢方薬は時間をかけてゆっくり効きます」と、言い訳をしておかなくてはいけないというわけです。患者様のほうでも、そう言われてしまうとそうなのかと思い込んでしまい、薬効が多少ありますと、それがなんとなく効いているのではという状態で誤魔化されていることも多いのではないかと思います。
 また最近では漢方薬はほとんどの場合、漢方薬のエキスを抽出して粉末にしたエキス剤が主流となっていますが、これもまた漢方薬が効かない一つの原因ではないかと思われます。
 例えば葛根湯や小青竜湯のように、「湯」のついたものは煎じ薬のことを指し、煎じた状態、つまり「湯」の常態で飲むことを現わしています。もともと煎じたものから取り出したエキス剤ですから、成分は同じものでしょうから、それはそれでよいのかもしれません。しかし本来「湯」の状態で飲むものをエキス剤という粉の状態で飲むことは、どうも不自然であり、どうも便利さを追求するあまりに本来の姿を見失ったようなものではないかという感がしてしまいます。
 もし今お飲みになっている漢方薬があまり効いていないと思われたら、それは処方があってないのかもしれません。もう一度処方を尋ねて、より自分の身体にあったものを選択するようにしてみてはいかがでしょうか。


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薬に関して(1)

 東洋医学・鍼灸医学をしている人には“自然派”の人が多いようで、薬も漢方は飲むけど、西洋医学の薬は絶対に飲まないという人も多いようです。また、西洋医学の薬を否定してしまう人も少なくないようです。
 私は、薬(西洋医学の薬も、漢方薬)もに関してはしっかりとした診断と、治療過程を観察することで薬の量や種類を柔軟に変えていく処方であればいいかと思います。しかし、西洋医学の薬だけでなく、漢方薬についてもそうですが、薬には副作用がつきものです。その副作用のことを考えますと、薬は身体にあっていないものを服用していますと、副作用の害ばかりが体を蝕んでいきます。それを考えますと、やはり薬の服用には注意が必要です。
 
 薬の処方についてはいろいろな問題があるかと思います。今日は西洋学の薬の処方について、鍼灸治療に携わる者として、患者様を見つめながら思うことを二つ挙げてみます。
 一つは、薬の処方にあまり変化がないということ。体が良い方向に向かっているのに、相変わらず薬は同じものが処方され続けられるというが多いようです。身体は一日一日変化しています。大げさに言えば、一分一秒常に変化しています。ましてや薬を飲んでいる、飲んでいないかで体の中では変化が如実にあるわけです。しかし、その変化を無視して同じ薬を処方し続けるのは、その変化をないがしろにしているということではないでしょうか。薬の処方に変化がないということは、薬を飲んでいても変化がない、体が良くなっていようと悪くなっていようと、体の変化を臨床の中でみていないと言うことになってしまいます。
 次に挙げる問題は、西洋医学での薬の処方は、症状に対して処方されるので(現在の漢方薬の処方もこの処方と同じになってしまいましたが)、症状を訴えれば訴えるほど薬の種類が増えていくことです。しかし、症状とは体が訴える表現であり、その表現には病の基がありますので、症状に合わせて薬を処方することは、その病の基を無視することで、余計な副作用を増やすことにもなります。
 先日来院した患者さんは、便秘がちだということを病院の先生に訴えたところ、便秘薬を処方されたそうです。その薬を飲んだら、便が出るようになったそうなのですが、水のような便になってしまったということです。そして処方されたのは10日分です。皮膚やお腹の状態を触れて確認しますと、栄養が巡っておらず、かさかさしています。つまり、便秘が解消されたのは良いのですが、過度な下痢になったために、栄養分がすっかり流れてしまっているのです。この患者さんは疲れやすく、体の体力をつけることが治療の主眼になっていますが、このように過度な下痢になってしまいますと、鍼灸治療の効果も出にくくなってしまいます。この例でさらに不可解なのは、この便秘薬が10日間も処方されていることです。どうして10日も必要なのかと言う根拠はおそらくないでしょう・・・。10日間もこのような下痢状態が続くと、ますます栄養を吸収することはできず、身体は衰退していきます。体が衰退していきますと、体力がなくなりますので、今度は自分の力で便を出すことも厄介になっていき、どんどん便秘が悪化する恐れもまります。このように、根拠のない症状への薬の処方は、体全体から見ると悪循環を引き起こすことが多々あります。
 鍼灸師は医師の薬の処方に対していう立場にはありません。また知識として西洋の薬のことを知ることはできますが、実際に処方をしているわけではないので、それに対して何も言えません。しかしながら、こうして東洋医学の診断・治療をしていますと、気がつくことはたくさんあります。
 薬を飲むことで、どのような副作用がどれだけ強く出るのか、またその副作用に目をつぶってでも薬の効果をとるほどの価値があるのか、というところを患者自身も自分の身体の声に尋ねることをすることが大切な時代だと思います。



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『ファースト・レコーディング』 ジャニス・ジョプリン

ファースト・レコーディング ファースト・レコーディング
ジャニス・ジョプリン (2004/08/04)
Sony Music Direct
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 季節が変わり、BGMもまた変えていこうかと思っているところです。最近はヒーリング・ミュージックを中心にかけたりしています。しかし、ヒーリング・ミュージックはアーティスト重視ではないので、物足りないところもあったりする。といってもこれは一日中治療室にいる治療家にとっての問題であり、身体を治し、癒すひと時を感じに来ている患者様にとってはそれほど重要ではないかもしれない・・・。
 と思いつつも、BGMをどうしようかと思ってしまう・・・。
 そこで70年代あたりのロックを集めてみてはどうか・・・と思った。もちろん治療院のBGMですから、あまり過激すぎるロックはよくないと思いました。ドノヴァンの「スーパー・サンシャイン・マン」、Tレックスの「テレグラム・サム」など、いろいろと考えてみる。少し時代は戻るがエルビスもいいのがあるなあ・・・などなど。しかし、やはり個人的な趣味の域を出ない・・・。
 そんな時に思い浮かんだのがジャニス・ジョプリンの声。ジャニスの声は重い。それは思いがこもっているから重い。思いが重い、というとしゃれのように聴こえるが、しゃれではなく、本当の話。ジャニスの声には真実味があります。
 今日冒頭に掲げたこのアルバムでは、荒削りながらも気持ちよく歌うジャニスの声が聴けます。フォーク調、カントリー調の曲も入っており、正直アルバムには統一性はありません。バンドの演奏もフリーな感じです。アルバムジャケットのデザインもサイケな感じで70年代の雰囲気を味わうことができます。一般的にはあまり評価が高くないアルバムですが、ジャニスを味わうためにはぜひとも聴いてほしい一枚です。
 しかし・・・これは治療院のBGMにはなりそうもありません・・・。


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古医書を読む抵抗

 表参道・青山・源保堂鍼灸院では、鍼灸の原点を『黄帝内経』『難経』に求めていますが、さらに『脾胃論』『奇経八脉巧』『類経』『鍼灸聚英』などの古医書も幅広く参考にし、鍼灸の原点から外れることがないように臨床をしています。
 以前も現在の鍼灸医学の流派をこのブログでも紹介しましたが、西洋医学的な診断を基に治療をする流派も、また古典的な治療を標榜する流派に於いてさえも、実際の漢文にあたる先生は少ないようです。
 しかし、その理由はとても稚拙なものではないかと思います。それは、単純に、「漢文が読めない」「漢文を読むのがめんどくさい」ということではないでしょうか。この理由により、最初から古医書を読むことを避けてしまっている人が実に多いと思います。
 もちろん古医書を読むことは簡単ではありません。また漢文を読むことに慣れ、さらにそれを読み進めて理解し、臨床に使うためには時間がかかりますので、治療者にとってはそこまでして学ぶだけの価値がないように思ってしまうのかもしれません。
 しかし、これはなんとも奇妙ではないでしょうか?
 たとえば、もしこれがSE(システムエンジニア)のような仕事であれば、コンピューター言語のことに精通することが仕事をするスタートになり、それを学ぶことが必要不可欠なはずですから、SEの方がコンピュータ言語について学ぶことは、専門家としてなんらおかしなことではありません。
 一方鍼灸師全体を見てみますと、このような専門分野の勉強を、「読めないから」という理由で放棄してしまう人が実に多いというのは、専門家として恥ずべきことではないかと思います。
 私がこのブログでも、治療院のページでも何度も繰り返し述べているように、鍼灸治療の原点は古医書にありますので、そこに触れること無しには鍼灸医学をしているとはいえないのではないかと思います。そして触れる書物も、誰かが訳したものや誰かが一部を取り出して解説しているようなものでは、本当に触れていると言うことにはなりません。
 もっと古医書の世界に直接触れる先生が増えることを期待しています。
 

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岡本太郎記念館

 私は大学当時は鍼灸の世界などまったく眼中になく、どちらかというと文学や写真に興味を持っていました。
 あるとき文芸部の先輩が大学周辺を歩こうと言い出しました。
 バイトも何もない日に待ち合わせをして、青山のあたりを散策。空高い秋の頃であったと思います。
 この散策のルート選びは全て先輩にお任せをして、さらにいろいろとガイドしてくれました。はっぴぃえんどの歌にもなった麻布十番近くの暗闇坂など、ちょっと変わったところを歩き回りました。以前この先輩とは千葉の富津などをドライブしたり、ピンボールを尋ねてゲームセンターを歩き回ったりと、この先輩からは“視点の面白さ”を教えてもらったように思います。
 この散策でだいぶ歩いた後、最後に先輩が案内してくれたのが岡本太郎の自宅兼アトリエでした。先輩は、私が岡本太郎の大ファンということをまったく知りませんでしたが、こうして最後に案内してくれたのも今となっては不思議です。現在この自宅兼アトリエは、岡本太郎記念館となっているますが、当時は自宅兼アトリエですから、もちろん中に入れることはできませんでした。壁と木々で中はあまり見えませんでしたが、白いオブジェや、手の形をしたオブジェなどの先っぽを垣間見ることができました。先輩と私は二人でジャンプして中を覗こうと必死になりました。もしかしたら岡本太郎に会えるかもしれない、という期待から、普段よりもかなり高くジャンプできたように自分には思えました。そしてジャンプでは物足りなくなり、正直言えば、ブロック塀も少しよじ登っていまいました・・・。庭に面する大きな窓が見えたとき、ひょっとしたら・・・という期待がさらに高まり、心臓をバクバクさせました。しかし結局岡本太郎に会うことはできませんでした。その後何度かこの自宅前に足を運んで、同じようにジャンプを繰り返しました。しかし、いつも期待は空振りとなり、遇うことはできませんでした。もう少し羞恥心がなければ、ベルでも鳴らしたんだけど・・・と思うのですが・・・でもやはりそれはできなかった・・・。
 そしてしばらくして岡本太郎は亡くなった・・・。その訃報を聞いたとき、どんな形でもいいから、生の岡本太郎を見ておきたかったと、ずいぶんと後悔したのを思い出します。もっともっと何度も自宅に足を運んでいれば・・・もしかしたら・・・と。

 そしてまた時が過ぎました。岡本太郎の自宅兼アトリエは岡本太郎記念館として公開されるようになりました。記念館では「座ることを拒否するイス」にも座り放題で、鐘も鳴らすことができます。当時入りたくても入れなかったこの空間に、今自分が立っている・・・。これはすごく大きな感動でした。

 みなさまもぜひ岡本太郎記念館に足をお運びください。当院からも歩いていけますので、治療を終えた後にぜひともよってください。
 この岡本太郎記念館(岡本太郎の自宅兼アトリエ)にはまだ岡本太郎がいます。まだまだこの部屋で瞬間、瞬間、岡本太郎は生きています。 都会の生活に疲れてしまったとき、気持ちを充電しに記念館を訪れてみてはいかがでしょうか。きっと岡本太郎が、語りかけてくれるでしょう・・・。


岡本太郎記念館のページ → こちら


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参考


今日の芸術―時代を創造するものは誰か 今日の芸術―時代を創造するものは誰か
岡本 太郎 (1999/03)
光文社

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岡本太郎の貴重映像

 第2日本テレビと言うページの中で、『岡本太郎大博覧会』というページがあります。ここでは貴重な岡本太郎の映像を見ることができます。たくさんの映像があるのですが、ついつい全部見てしまう勢いでクリックしてしまいます。映像と岡本太郎の言葉をうまく合わせたすばらしい特集です。
 映像のタイトルを見て見ますとこんなものがあります・・・。
「太郎、奇妙なダンスを踊る」
「ドライビング太郎! 路上で珍客と遭遇する」
「生活太郎! 生活が芸術だ!自由に溶ける!」
「太郎、矛盾こそ人生だ!」
「太郎、下手っぴを誉め讃える」
「原色だよ人生は」
「いずれ?また?そんなの逃げてるだけだろ」
「太郎、ゴッホの自画像とにらめっこする」
  ・
  ・
  ・
  ・
などなど、これからも貴重な映像は増殖するという。
 特に最後に挙げたゴッホの自画像とにらめっこする太郎先生はすごい。太郎先生はこれまでも“新幹線”ともにらめっこしたという。ほんとにすごい人です。脱帽・・・。
もっともっと瞬間、瞬間に生きなくては・・・。

第2日本テレビ・岡本太郎大博覧会はこちらから・・・
 → http://www.dai2ntv.jp/p/z/002z/index.html


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参考図書


歓喜 歓喜
岡本 太郎 (1997/09)
二玄社

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太郎先生待受け画面

 以前携帯の待受け画面用に作ったものです。
 携帯を開く度に岡本太郎が訴えかけてきます。
 よかったら皆様もご利用ください

taroubakuhatu.jpg

tarouharebare.jpg




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『太郎に訊け!』

太郎に訊け!―岡本太郎流爆発人生相談 太郎に訊け!―岡本太郎流爆発人生相談
岡本 太郎 (2001/05)
青林工藝舎

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太郎に訊け!〈2〉―岡本太郎流熱血人生相談 太郎に訊け!〈2〉―岡本太郎流熱血人生相談
岡本 太郎 (2001/07)
青林工藝舎

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太郎に訊け!〈3〉岡本太郎流激突人生相談 太郎に訊け!〈3〉岡本太郎流激突人生相談
岡本 太郎 (2001/09)
青林工藝舎

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 鍼灸学校を出てしばらくしていて、壁にぶつかりました。それは心の揺らぎが原因であったように思う。何かまた爽快な感覚を味わいたかったのかもしれません。そして生きる喜びと言うのか、生きる糧というのか、そういうものを渇望していたのかもしれません。はたまた自分の中の動かしがたい欲望みないなものを、どう消化していけばいいのかが分らない日々だったと思います。もちろんいまでもそのような気分に陥ることもあるのですが、そんなときはいつも人や言葉に出会うことが多い。
 そういった日々の中でであった本が、やはり岡本太郎の本であった。この本は週間プレイボーイに連載されていた岡本太郎が読者の相談に答えるという『人生相談・にらめっこ問答』をまとめたものである。199年から80年代初めまで続いた連載です。
 岡本太郎流、つまり“瞬間”“瞬間”に生きることを基本に、様々な若者からの問いかけに、真っ向勝負を挑んでいます。読者からの書面による相談ではあるが、岡本太郎はその相談者が目の前にいるような気分で相談に答えていたということがよく分かる。臨場感もあり、言葉も活きており、とてもたくさんの勇気をもらえる本です。

この中で私が好きな言葉は、
「逃げない、晴れ晴れと生きる」
ということばです。
常に“瞬間”に命を注いだ一人の芸術家の活きた言葉ではないでしょうか。私もこの言葉に負けないよう、今、“晴れ晴れ”と自分の道を進んでいます。


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『岡本太郎が撮った「日本」』

岡本太郎が撮った「日本」 岡本太郎が撮った「日本」
(2001/04)
毎日新聞社

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 岡本太郎は1952年、41歳の時、東京国立博物館にて縄文土器に触れて、“なんだこれは!”と強烈な衝撃を受ける。火炎式縄文土器のあの燃え上がる形体と文様に、原日本を直感し、脈々たる生命の高ぶりを感じた。それ以降日本を再発見するため各地に足を運んだそうです。太古から続く日本の源流を、祭りや各地の風土の中に見出し、自分の血肉と化し、さらに自分の想像力を高めていった。
 この写真集は、そんな岡本太郎の旅の軌跡をまとめたものです。撮った写真は資料的な意味合いもあるのでしょうが、やはりフレーミングがさすがだなと思います。岡本太郎がどのような視線で日本を再発見しようとしたのかが分る一冊です。今では失われつつある日本の情景もあり、見ていると我々も揺さぶられる、そんな一冊です。


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ジャンル:本・雑誌

岡本太郎の文章との出会い

 岡本太郎の文章に出会ったのは、高校2年の模擬試験のことだった。私が通っていた高校では、定期的にマークシートの模擬試験が行われていた。何学期だったかは忘れてしまったが、たしかに高校2年の時だった。国語の模擬試験の、最初の現代文の出題文が、岡本太郎の文章だった。その文章の内容は、“食べること”であった。きれいな料理をとろとろと食べるのではなく、相手の生命力を自分の中に取り込むようにカッっと目を見開いて食べる、のが食事のマナーである、というような内容だったと思う。これは模擬試験であったので、ところどころに線が引っ張ってあり、ここでの著者の気持ちに近いものを選びなさい、というような設問がついていた。しかし、そのとき自分はすでに岡本太郎の魂と通じ合ってしまっていたかのように興奮していたので、全ての設問が空虚に見えてしまい、どれもが岡本太郎の意図を汲み取っているとは思えなかった。もし設問の中に“該当なし”というのがあったら、迷わずそれを選択していただろう。
 この模擬試験以来、しばらく私は食事の時は岡本太郎のように、カッと目を見開きながらご飯を食べていた。相手の生命力を自分の血や肉に同化させようという気合を込めて・・・。
 現在自分は鍼灸師という仕事をしている。鍼灸の理論体系を学んでいると、食欲・食べることは生命力を高まる重要な行為であることがよくわかる。李東垣の『脾胃論(ひいろん)』というものはその際たるものであるが、このように、岡本太郎の謂わんとしていることは、東洋医学を学ぶ自分にも大いに役立っているといえる。

 この模擬試験で岡本太郎の文章に出会うまでは、私にとっての岡本太郎はテレビで見る“変なおじさん”“変わった人”という印象だけだった。まさかこんな文章を書く人だとは思っていなかったので、この文章を読んだときは様々な意味で衝撃的だった。衝撃的過ぎて、このときの模擬試験の結果は散々なものだった・・・。

 高校を卒業して浪人をした。暗い浪人生活の中で彷徨っていた。その彷徨いの中で、何気なく手にしたのが『自分の中に毒を持て』であった。当時は新書版で、岡本太郎の写真ではなく、イラストが表紙であった。私は黄色の蛍光色のマーカー(受験生らしい・・・)を引きながらむさぼるように、何度も何度も読み返した。岡本太郎の文章が本当に自分の血肉になったかどうかは未だにわからないが、この本はいつでも取り出せるようにしっかりと実家の本棚にしまってある。
 先日『明日の神話』をみて、この本のことを思い出した。今開いたら、どんな思いでこの本を読むだろう。自分が浪人している時にひっぱったあの蛍光色のマーカーは、まだ色あせずに残っているだろうか。そして自分の心にまだ岡本太郎の言葉は響くだろうか・・・。


自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか 自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか
岡本 太郎 (2002/01)
青春出版社
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『明日の神話』

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                      『明日の神話』  岡本太郎作

 先週の日曜日、汐留・シオサイトで公開されている岡本太郎の『明日の神話』を観に行ってきました。
 2003年にたまたまテレビをつけてニュースステーションを見たところ、岡本敏子(岡本太郎の養女)さんが出演しており、この『明日の神話』を発見するまでの旅を放送していました。そのときはまだ壁画が発見されたばかりで、いつ日本に持ってこられるのかさえ目処が立っていない状況でした。ホテルのロビーのために描かれた壁画で、その大きさから展示するスペースの確保もままならず、また日本に運ぶだけでもかなりの困難が予想されていました。岡本太郎のファンとして、この作品をいつか見たいという気持ちがずっとありました。そしてその機会が3年後の日曜日に訪れました。新橋の駅を降りてシオサイトまではすぐですが、その道の中で、胸の鼓動が鳴り止みません。

 実際の作品から熱が発せられているようでした。熱さが皮膚に伝わるのです。この作品は原爆が炸裂する瞬間を捉えたものです。強烈な絵を印象づける壁画の正面にある骸骨。骸骨からは炎が炸裂して、周囲には恐ろしげな光景が広がる。しかしその一方で、その核の闇に負けまいとする希望もこの絵には表現されている。そして、核や戦争といったものを繰り返してはならないという強いメッセージを感じることができる。 この作品の構想が練られはじめたのは1967年だそうです。1967年といいますと、日本では戦後色がなくなりつつありながらも、まだまだ戦争の後遺症が残る時でもある。そして高度経済成長がはじまり、日々の生活に忙殺されていく・・・。世界に目を向けるとまだまだ戦争は終わろうとしていない・・・。このような中で、岡本太郎は、現代人の根底にある魂をゆさぶり、爆発させようと目論んだのだろう。そしてその目論見はこの作品に結実され、37年後の我々の前によみがえり、37年間のタイムカプセルでの熟成を終えて、さらに深みをもって我々に訴えかけている。

 このときの岡本太郎は、大阪万博のテーマプロデューサーの仕事も始まっていた。つまり、あの不及の名作『太陽の塔』もまたこの『明日の神話』と同時平行に作られていたのです。
 大阪万博が開催された1970年、岡本太郎は59歳。なんてロックでパンクなおやじなんだろう・・・。

 シオサイトでは「Be TARO(太郎になれ)」が合言葉になっていた。会場はこの合言葉を元に盛り上がり、岡本太郎のポーズをみんなでやっていた。
 しかし、岡本太郎がもし生きていたら、この合言葉にも異議を唱えたに違いない。
 会場に掲げられた岡本太郎の写真パネルを見上げると、太郎先生は誇らしげにポーズを決めながら、そして高らかに叫んでいるに思えた・・・。
「太郎になるな、自分自身になれ!(Be MYSELF)」と・・・。


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参考図書


岡本太郎「明日の神話」修復960日間の記録 岡本太郎「明日の神話」修復960日間の記録
吉村 絵美留 (2006/08)
青春出版社
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